他人のことには興味がない。
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先日のテロで集めることが出来たランスロットのデータ。
それをいつものごとく分析をしていた。


「セシルさん。」
ここの人間ではない男の声がする。
「はい。」
すかさず彼女の声がする。


他の部隊からの資料提出があったようだ。
それをわざわざ届けに来てくれたどっかの隊員君が彼女に声をかける。
それに彼女が応じる。


「頼まれてた資料です。」
「わざわざありがとうございます。」


これはいつもの光景だった。

ここから先がいつもと違う。

キーボードを叩きながら、やりとりを耳にする。


「あ、あの・・・・」
男は、先程までの部隊の人間らしい凛々しい声ではなくなって、
何か言いたげな声をあげていた。
「何か?」
お人好しな彼女は男を心配する。
「いえ、その、ちょっとお話が・・・・」
「ランスロットのことでしょうか?もし重要なことならロイ」
「い、いえ!!ランスロットのことでは・・・・」
男は彼女の言葉を遮り、放つ声は、益々弱々しい声になっていた。

はっきり言って、その男は邪魔だ。
業務に関することではないのだから。
一度振り返るべきかと思ったが、やめた。
一瞥を与えたところで、何も面白い変化はない。
それに。
他人のことには興味がない。


「・・・え?」
何が言いたいのか分からないという声を彼女は放った。
「ちょっと、外で話させて頂きたいのですが。」

その提案を彼女は受け入れた。
私のところまでやってきて、資料を手渡し、暫く席を外す旨を伝えた。
彼女は律儀だ、そう再認識した。

彼女と男に向かって
「どぉ〜ぞ〜、ごゆっくりぃ〜」
と言った。



他人のことには興味がない。



今回ばかりは珍しく勘が働いた。
普段は割と気が利かない方だ。
男は彼女だけに用があったのだろう。
だから、「ごゆっくり」なんて言葉が出てきたのだ。


暫くすると、ドアが開いた。
彼女かと思ったが、その勘は外れた。
スザクくんだった。


「あれー?今日早くない〜?サボったぁ?」
「いえ、今日は授業の無い日だったんですよ。」
「ふぅ〜ん。たまにはサボってこっちに来てもいいんだからね。」
「それは、出来ません。」

スザクくんは、困ったように笑っていた。
バカをつけないとむしろ失礼なくらいの真面目な青年だ。
その青年はそのままロッカーへ向かうのかと思ったら、ふと立ち止まって言った。


「セシルさんって、モテるんですね。」
「へ?」


彼は今、廊下で見た風景を説明してくれた。
その説明によると、男は彼女をデートに誘っているらしい。
今週の土曜から公開が始まる映画に。

勘は当たっていた。

「その男の人、チケット渡そうとしてて、すごく一生懸命でした。」
「ふぅ〜ん。」

「でも」と繋げて、スザクくんは続けた。

「セシルさんなら不思議はないですよね。」
「何がぁ?」
「軍にああいう優しい女性ってあまりいないじゃないですか。」
「でもさぁ〜、その隊員君は、彼女の鉄拳知ってるのかねぇ〜?」
「ロイドさん・・・。」
「ん〜?」
「それ、セシルさんが聞いたら・・・」

こういう話をしている時に限って、ご本人は登場するものである。

「私がどうかした?」
「あ、いえ!何でもないです。」
「あら、内緒話でもしてたのかしら?」
「んふふ。そんなところかなぁ〜。ねぇ?スザクくん?」

彼女は、僕の台詞にムッとした表情を作る。
それを見てスザクくんは焦ったようだった。

「は、はい。あ、僕、着替えてきますね。」
「はい、いってらっしゃい。」

二人でスザクくんの背中を見送った。
彼女は切り替えたように、仕事の話をし出す。

「あ、資料ご覧になりました?」
「いーやー。あとでゆっくり見るよ〜。」

彼女の手元にはお誘いの証拠品はなかった。
でも、言っておこうか。

「セシルくん。」
「はい?」
「今週末休んでも良いよ〜。」
「え?」
「最近働きっぱなしだったし、たまには休んだらぁ〜?」
「そんな!ロイドさんも同じじゃないですか。むしろ私より・・・」
「僕は他にすることもないしね〜」
「・・・休みは必要ありません。」


何故?

あの男の誘いを断った?


聞いてみようと思った。
でも、その言葉を続ける気にならなかった。


「そ。」
結局、一言に収める。
「はい。」
微笑いながら、彼女は答えた。



「あ〜、セシルくーん。」
「はい?」
「実験前にコーヒー淹れて〜。」




他人のことには興味がない。





でも、ほっとしている。










ゆめみすぎた。