無理です。
「あ〜、そうだ〜、今度イチゴを取り寄せようかぁ。 美味しいイチゴ知ってるんだ〜、キミが好きそうなね。 きっと、キミがジャムにしたら美味しいよ。 あぁ、そうそう!もうお見合いも終わったし、たまには休みが欲しいよねぇ〜。 スザクくんも頑張ってくれてるし、みんなでお休みとろうかぁ〜。 黒の騎士団さえ動かなければいいしさぁ。」 ひとしきり話し終えたロイドは椅子を90度回転させた。 左隣のデスクにいるセシルを見た。 「ねぇ、そろそろ泣きやんでくれない?」 黙って、彼女は顔をそむけた。 話す気などない、そういう意思表示だ。 「じゃあ、せめて何で泣いてるのか教えてよ」 セシルの泣き声は美しかった。 形容する言葉はこの世のどこかにあるんだろうか? 言語の限界を感じた。 「無理です。」 やっと彼女が言った言葉はそれだった。 「いつもみたいに“教えて”くれないの?」 「分かってるんでしょう?」 「う〜ん・・・ちょっと分かってるかなぁ〜?」 「じゃあ、必要ないですよね。」 きっぱりと言い切られる。 言葉だけなのに、両手で体を突き放されるような威力があった。 「キミが泣くと胸が痛い」言いそうになってやめる。もっと痛い思いをしているのは彼女の方だ。そんなことくらい何も“分かっていない”ロイドにも分かった。 背中しか見せてくれない部下を慰めようと、抱きしめるのは簡単だ。でも、出来る訳がない。したら、余計に彼女を苦しめるだろう。それも何も“見えていない”ロイドにも予測できた。 いろんなことを思い巡らせて、ただ、彼女が泣きやむのをひたすら待つことにした。 それしかなかった。 それにはそれなりに時間が必要なことが分かっていても。 お見合い後で。 |