バイオレンスモーニング
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珍しい。
うまくいかないなんて。
おまけに焦るなんて。

その日はたまたまいろんなことが行き詰まって立ち行かなくなっていた。
イライラしそうだったが、表情に出すまいとして、部屋へ帰った。
ワインがあった。いつから家にあるのかも分からないような、買ったのか誰かから貰ったのかもよく知らないワインだった。
ほとんど飲んだ。一気に飲んだ。
タバコも何本か吸った。久しぶりだった。
暫くして、酔いが回っていた。
体が崩されたかのようにベッドに堕ちていた。





ドン、ドン、ドン、ドン、


何かが叩かれているのだろうか。そんな音がした。
それとも自分を追いつめる自分が勝手に作っている幻聴なのだろうか。
どうでも良い。


目を刺す光を感じた。
ああ、起きなければ。強制的にそう思わせる嫌な光だ。
体を起こすと、人がいた。
光の所為でよく見えない。視力の悪さも手伝って、ぼやけて見える。
背後に光を従えているようだ。
天使か。
しかし、天使は、闇を作った。
悪魔か。
闇のスキマからさっき自分の目を刺した光が漏れていた。
天使だか悪魔だか知らないが、その人物は、漏れる光を背にして、笑いながら近付いた。
何か言っていることは確認できたが、よく分からなかった。何を言っているかどうでも良かったのかも知れない。
その人の腕をつかんで、自分の方へ引っ張った。
半分抱きしめる形になった。
何でこんなことしてるのだろう、分からない、頭が働かない。昨日の酒のせいか、眠気のせいか、頭がおかしくなったのか。どの理由にせよ、自分の腕の中にいる人が彼女だと分かった。そういえばこんなにおいがしていた気がする。
逃げようとしてるのか、その人は体を動かした。反射的に腕に力を入れた。
そして、ちょうど上にあった方の腕で髪を撫でる。
こんな髪をしていたんだ。意外と柔らかい。
そう思って、もう一度撫でた。やっぱり柔らかい。
朝起きたら言わなければいけない言葉がある。

「おはよう。」
セシルくん。

聞こえたか、聞こえなかったか。
まあ、どちらでもいい。

ランスロットいじってるのも大好きだけど、こうしてるのもいいもんだなぁ。
好きなのかもなぁ。
キミのこと。





そして、起きたら殴られた。





「実は全部覚えてたって今更言ったら、命がなくなっちゃうかなぁ。」
彼女が帰っていってしまった後で、バスルームの鏡の中にいる、青あざを作った自分自身に言った。
「においで分かったことは内緒にしておこうか。」










著しい捏造ごめんなさいもうしません