甘く溶ける
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「はいっ、スザクくんはこっち!!」
セシルはスザクに小さな箱を渡した。
それは緑色の包装紙にくるまれ、リボンがしてあった。
勢いに圧されるまま、手に受け取った。
「いいんですか?もらって・・・」
謙虚なスザクの姿に少し驚きもしたが、彼に微笑いかける。
「いいのよ。スザクくんはカロリーも気にしなければいけないから、少し苦めにしてあるの。」
柔らかい表情を浮かべて優しく語りかけるセシルだったが、スザクはその苦さがいかほどのものか気になって仕方がなかった。



すると、ロイドが二人の中に入ってきた。
「ロイドさんはカロリー取らなきゃいけないから、甘めにしてあります。」
「ありがとぉぉ〜」

スザクと同じくくらいの箱を受け取ると、ロイドはスザクを見てニヤニヤとしながら話しかけた。
「スザクくん、学校では貰わなかったの〜?」
「えっと、生徒会の人に幾つか。」
「へぇ〜。本命は幾つ?」
「そんな、本命なんて・・・僕には・・・」
「なぁんだぁあ、つまんないのぉ〜。君って意外とやる方だと思っ」
「・・・ロイドさん?」
ロイドの嫌味を押し切ったセシルの黒い声と笑顔を見てその以降の言葉を飲み込んだ。
「いやあ、僕は学生の時はぁ、無縁だったからさ〜!スザクくんはさぞモテるんだろうなあって!!」
突然早口になるロイド。
「僕も無縁ですよ。」
だから大丈夫と言わんばかりの笑顔でロイドに答える。
「それって嫌味になるよ?いくら“てんねん”でも覚えておいた方がいいんじゃない?」
セシルは二人のやりとりに笑いをこらえていた。
それは単純にやりとりが面白かったのではなく、ロイドが遊ばれているところに笑っていた。

その姿にむっとしたロイドは、何かに気づいて、スザクに言った。
「あ、でもねぇ〜、無縁な僕も3年前から本命もらってるんだぁ〜。今年も貰ったけどねぇ〜」
そう言うと、ちらりとセシルの方へ視線を落とした。
3年前。それはロイドに初めてセシルがチョコを渡した時だった。
そのときもかなり甘いものを渡していた。その次もその次も。
そんな過去の記憶たちが蘇って、ロイドの嫌な視線と合ったセシルは彼の意図を読みとれた。
笑った自分への反撃だと分かった。
ロイドの発言が、セシルだと特定していないからこそ、反撃にも出られず、ただ焦るしかなかった。
一方スザクは、目を丸くしてロイドの本命発言に驚いていた。
「ロイドさんにそういう方がいたんですね。どんな方なんですか?」
「ん〜、そうだなぁ〜。毎年、すごく甘くて喉がとけそうなチョコを作る人かなぁ〜?」
ロイドはますます悪ふざけをしている顔になっていた。
さらに焦ったセシルは、コーヒーを淹れてくると部屋を出て行ってしまった。

出て行った後ろ姿にロイドは笑いが止まらない気分だった。きっと今頃赤面して、自分の文句を言ってるんだろう。それか、後で殴られるかな。思えば思うほど、想像が膨らむほど、体がウズウズした。


「今度、その方にお会いしてみたいです。」
ロイドの悦に入っていた気分を切り裂いたスザクの一言にロイドは思わず「はぁ?」と呆れた声を出した。
「君って・・・空気読めないだけじゃなくて、人の話も聞いてないんだね?」

何のことか分かっていないスザクに、ロイドはランスロット乗ってる時さえ聞いてくれてればいいけど、と付け足して、自分のデスクへ戻っていった。










セシルさんが大学卒業(21歳と仮定)後に特派へ来たなら、
24歳でバレンタインは3年あるかなという計算で。
まぁ、捏造設定なんで年数は適当です。
あと、義理チョコは日本にしかないとい噂を聞いたので、
義理・本命という概念はブリタニア人にはない、かも。